森田季節『不動カリンは一切動ぜず』

不動カリンは一切動ぜず (ハヤカワ文庫JA)

不動カリンは一切動ぜず (ハヤカワ文庫JA)

セックスを介して広まる伝染病の蔓延により、すべての子どもたちは人工授精によって誕生する社会。さらにそこでは、人々は掌に埋め込まれたノードというものを介して情報や思念の交換を行っている。

こんな設定で物語は始まります。
主人公の不動火輪は名前の通り、消極的な性格で自ら積極的に動くようなことはしない。火輪とその親友である滝口兎譚は、学校の自由課題の授業『あの事件はどうなった?』のために小学校の遠足バス転落事故の調査を始める。
しかし、ある日滝口兎譚は何者かに誘拐されてしまう。親友を助け出すべく、不動火輪がついに動く……

と、この辺りまで非常に楽しんで読めました。
思念の交換を国家に監視されている監視社会。SF的な設定のなかで進んでいくミステリ的な展開。少女たちの絆。ライトノベル風の文体で語られるダークな物語。

これからどうなっていくのか、と思っていると、後半雰囲気はガラッと変わり、オカルト伝記小説となってしまいます。
宗教テーマが濃くなり、最終的には異能バトルが始まってしまいます。
たしかに、思念の交換を行っている社会で成立した宗教というものは興味深いのですが、あまり説得力が感じられず、前半のSF設定も薄くなり活かせていない気がしてしまいます。

ということで、正直イマイチ楽しめない作品となってしまいました。