翻訳SF短篇オールタイムベストランキングのリスト
お久しぶりです。ものすごく久しぶりにこのブログが更新されることとなりました。
というのも、翻訳SF短篇のオールタイムベストランキングのリストを作ったので、それを配布する目的です。
せっかく作ったので、使ってもらおうと思いまして。
ランキング、著者、短篇タイトル、収録されている本をひと目で見られるようにしたつもりです。
SFファンの人はたぶん重宝するんじゃないかな。プリントアウトしてトイレに貼り付けて眺めてください。
フォローしているランキングは、以下の通り。
(20世紀オールタイムベストは150位くらいまで発表されていますが、そこまで気力が続きませんでした)
・S-Fマガジン発表 翻訳SF短篇オールタイムベスト「98年版」「06年版」
ネット上で見られる翻訳SF短篇オールタイムベストってこれぐらいしか思いつかなかったのですが、他にありますかね。
ダウンロードはこちら↓から
ERROR!
Excelなので気に入らないところは各自でイジってください。拡張子は「*.xlsx」。
下のリンクをクリックするとアップローダーの暗証キー入力ページが開きます。
パスワードは「sflist」。
パスワード入力後、認証ボタンをクリックするとダウンロードできると思います。
ダウンロードしたものはご自由に使っていただいて結構です。人にあげても、ご自身のブログで配布しても、なんでもしていいです。
森田季節『不動カリンは一切動ぜず』
- 作者: 森田季節
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/09/30
- メディア: 文庫
- 購入: 5人 クリック: 116回
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こんな設定で物語は始まります。
主人公の不動火輪は名前の通り、消極的な性格で自ら積極的に動くようなことはしない。火輪とその親友である滝口兎譚は、学校の自由課題の授業『あの事件はどうなった?』のために小学校の遠足バス転落事故の調査を始める。
しかし、ある日滝口兎譚は何者かに誘拐されてしまう。親友を助け出すべく、不動火輪がついに動く……
と、この辺りまで非常に楽しんで読めました。
思念の交換を国家に監視されている監視社会。SF的な設定のなかで進んでいくミステリ的な展開。少女たちの絆。ライトノベル風の文体で語られるダークな物語。
これからどうなっていくのか、と思っていると、後半雰囲気はガラッと変わり、オカルト伝記小説となってしまいます。
宗教テーマが濃くなり、最終的には異能バトルが始まってしまいます。
たしかに、思念の交換を行っている社会で成立した宗教というものは興味深いのですが、あまり説得力が感じられず、前半のSF設定も薄くなり活かせていない気がしてしまいます。
ということで、正直イマイチ楽しめない作品となってしまいました。
山本弘『地球移動作戦』
- 作者: 山本弘
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2009/09
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 42回
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謎の天体と地球とのニアミスを避けるために地球を動かしちゃおう、という計画の顛末をゴリゴリの力技で描いた力作でした。
タキオンを利用した推進器「ピアノ・ドライブ」が実用化された近未来。
発見された新天体が観測の結果により、24年後に地球に接近し壊滅的な被害をもたらすであろうことがわかる。この危機を回避するために、地球では様々な対策が練られた末に、地球を移動させるという壮大な計画を行うこととなる。
最近のSFは、世界の細かな部分の説明をあまりしないままに話を進めていくものが少なくないですが、この『地球移動作戦』は違います。
地球を移動させる方法、地球を移動させることによって起こる不具合、政治経済的な問題、この他様々な事象、未来の生活、メカの構造など説明しまくりです。ストーリーを一時中断させてまで説明しています。
この姿勢にクラシックSFを愛しているという著者の趣味がうかがえるとともに、好感が持てます。
菅浩江『そばかすのフィギュア』
- 作者: 菅浩江
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/09/21
- メディア: 文庫
- クリック: 25回
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収録作
雨の檻
カーマイン・レッド
セピアの迷彩
そばかすのフィギュア
カトレアの真実
お夏 清十郎
ブルー・フライト
月かげの古謡
菅浩江の初期短篇集『雨の檻』を改題して、未収録作品の「月かげの古謡」を収録したものです。
この中での一番は「そばかすのフィギュア」でしょうか。
星雲賞受賞、SFマガジン創刊600号で行われたオールタイム・ベスト投票で国内短篇部門一九位にランクインし、さらには英訳されてイギリスのSF雑誌に載り、アメリカのSFの年刊傑作選にも収録された作品です。
世間の評判通り、傑作でした。やっぱりなんだかんだ世間の評価は信用できますね。たまに全く合わないこともありますが。
自在に動き、感情も持つフィギュアと少女の物語です。「美亜へ贈る真珠」にも匹敵する感動系のSFです。
その他の作品も総じて高品質です。
人型ロボット、クローン、伝統芸能をテーマにした作品は、その後の菅作品でも扱われるテーマで、初期作品の頃からすでに現在の作風を確立させ始めていたとも言えます。
意外とダークな作品もあるので、必ずしも読後感が良いとは言えませんが、読み終えたときの満足感は大きいです。